糸を手繰って
今日くらい3人で帰ってもいいかな、って思い始めたところに、リンカが話しかけてきた。


『じゃあミチカもその気になったみたいだし、簡単に紹介しとくね?』


あぁ、リンカ様には適わない。


あたしの心なんて思いのままだよね。


あたしの緊張をあっさり解いて、乗り気にさせるんだから。


悪い気はしないけどさ。


『ミチカ、聞いてる?』


『あー、うん。じゃなくて、ちょっとボーッとしちゃった。なんだっけ?』


『だからね。この人はあたしの従兄弟のヨシアキくん。うちらの一個上だけど敬語とかいらないから。』


『え、でも…』


『ミチカちゃん気にしないで。俺堅苦しいの苦手だし、普通にしゃべってくれていいからさ。』


『うん。』


あれ?意外と優しい人かなぁ?あたしも普通に話せてる。


と思った時、ふいにヨッシー先輩が手をあたしに伸ばしてきた。


な、なんだろ?少し体を後ろに退いてみる。


それに気付いたのか先輩は『髪、なんか付いてる』って言いながら、そっと頭に触れた。


下ろした右手の小指には淡く光る赤い糸が見える。


ちょっとだけドキッとしてしまった。


さらに先輩は頭をポンポンと軽く叩いて手を引っ込めた。


なんていうか、スキンシップが多い人なんだろう。
気にしないようにしなくちゃ。
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