糸を手繰って
『えっと、あの…』


肩に置かれた手を見ながら何か言おうとしたけど、近さと視界に入る赤い糸のおかげで淀んでしまう。


するとヨッシー先輩はパッと手を離して、『わりぃ』と言った。


『あ、の。ちょっとビックリしただけで。』


『俺なにを焦ってるんだろうな。かっこわりぃ。。まずは座れるとこに行こっか。』


伏し目がちに頭に手をやりながら話す仕草に胸がギュッとなった。


体はでかいけど、なんていうか、かわいい。


思わずニコニコしながら『はい!』って先輩の顔を見上げてしまった。


出会って二日めだけど、妙に懐ける雰囲気は“赤い糸”のお陰なのかな?


なんだかにやけてる先輩に促されて、ドーナツ屋に入った。


2人であーだこーだ言いながらメニューとにらめっこ。


あたしがストロベリーチョコクリームと、スペシャルダブルショコラで迷っていると先輩は『2つとも買って半分ずつ食べよう』と言ってくれた。


あたしたちと同じように高校生で込み合う店内で小さなテーブルに向かい合わせで座った。


なんかドキドキしてきちゃった。


男子と2人で過ごすなんて初めてだし。


そう意識したら先輩の顔をまともに見られなくなってしまった。
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