糸を手繰って
校内に入るとほんの少しだけ赤い糸が光っている人が見えてきた。


反対にカップルだけど光ってない人たちもいて、なかなか面白い。


下駄箱でスリッパに履き替えていると、リンカが肩を叩いてきた。


『ねぇねぇ!ナルセ先輩だよ!』


『え?どこどこ?!あ!ホントだー。朝から見られるなんてラッキー!!』


リンカが指差した方を見ると、目下あたしの片思いの相手であるナルセ先輩が見えた。


友達とふざけ合ってる先輩…だけどカッコいい。


メンズ雑誌の読モをしてて、バンドも組んでる先輩は校内外問わず人気だ。


叶う恋じゃないって分かってるけど、つい目で追ってしまって、他の男子なんか目に入らないんだ。


先輩と赤い糸がつながってたらいいのにな。


でも、見るのが怖い。


繋がってなんかない、って思っても期待しちゃう自分もいたりして。


あぁ、どうしよう。


迷って足が止まっているあたしを、リンカは勘違いしたのかからかってくる。


『まーた見惚れちゃってさ。話したこともないのに、緊張するほど好きなの?』


『あ、いゃ、うーん…。』


『顔赤いよ。テンパりすぎー。ほら行くよ!』
< 4 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop