糸を手繰って
『え、まぁ、一応、ね。』


なんだかしどろもどろで、リンカに主導権を握られてるあたし。


まぁ、いつものことだけどね。


『さて、そろそろ教室行こうか?SHR始まっちゃうよ。』


立ち上がってスカートのゴミを払いながらリンカが言った。


気付けばかなり時間が経ってたみたい。


『ありがとね、リンカ。』


なんだかわからないけど、あたしはそう言いたくなって呟いた。


『ん?何か言った?』


リンカには聞いてもらえなかったみたいだけど。


『ううん。なんでもない。行こうか?』


さっきの出来事を少し忘れることができたあたしは、元気よく階段を昇りだした。


深く考えても仕方がないことだってあるよね。


“赤い糸”のことも忘れてしまおう。


なんて固く決めたはずなのに、その日は一日中みんなの小指が気になって仕方がなかった。


だってね?


現国担当の厚化粧先生と、クラスで一番地味な男子の糸がつながってたり。


ラブラブカップルで有名な隣のクラスの美男美女が、実は本人同士じゃなくて、お互いの友達同士と糸がつながってたり。


面白すぎることばかりなんだもの。


リンカは、今日1日光ってなかったからきっとまだ出会ってないんだね。運命の相手に。
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