【短編】秘密な愛詩
「文音、お前は“代わり”じゃないよ。

俺が出会った中で、こんな俺に親身になってくれた人、他に居ない。

今日さ、文音が挨拶してくれなかったから、また別れなきゃいけない、って思って。
八つ当たりしてた。

お前は、俺をずっと見ててくれたのに本当ごめんな。」

そう言いながら、龍紀は私の頭を撫でてくれた。

違う…

「俺お前の事、文音の事大事にする。」

違うよ。

「私、奈月ちゃんと龍紀が羨ましくて、嫉妬して別れよう。って。

龍紀が信じられなかったんだよ?

私、龍紀を…」

チュ

そこまで、言った時龍紀がまた私の唇を奪った。
今度はさっきした、短くて唇が触れるだけのキスじゃない。

長くて、大人なキス。

そして、そのキスが終わりを告げ、

「もう言わなくて良いよ。
俺が原因を作ったんだから。
文音は、何も悪くないよ。

俺さ、学校で…人の前で文音と仲良くしたら、また誰かに盗られる気がしてた。

だから、名前で呼ぶなとか…学校じゃ話しかけるな。

とか…言ったんだ。

俺は馬鹿だな。

ごめんな。迷惑かけて。」

龍紀の優しい言葉。


本当に耐えられなくて、


ぅう…ヒック…

それから、私はいっぱい、いっぱい龍紀の胸の中で泣いた。

私達の恋人への第一歩は、ここから始まった。
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