幻想ロマンティック
「神田さんて呼ぶのはやめないかい?美姫ちゃんのお母さんと結婚したら、君も“神田”になるんだよ?」
私はそれはそうだけど、と言いたかったが口をぐっとつぐんだ。
まだ結婚してない家族にもなってない人を、お父さんなんて‥正直そんな直ぐに呼べない。
「いきなりお父さんと呼べなんて言わない、慣れるまでは私を名前で呼びなさい」
「‥‥え?」
「私も美姫ちゃんて呼んでいるからね、お互い結婚するまではそう呼ばないかい?」
「は、い」
「良かった、安心したよ‥どうやら君はとてもいい子のようだ」
クスッと笑った康弘さんの目だけは、笑っているように見えなかった。
「あら、随分静かね?」
「お母さん、どうだった?二人の兄弟は」
「ただいまー!父さん、僕すっごい楽しかったよ!」
人懐っこい可愛らしい少年は私の一つ下とは思えない、そして一つ上の兄は康弘さんとはあまり似ていないキリッとした日本人らしい顔立ちだ。
「やっぱり男の子は可愛いわね?女の子はませてるし、あまり可愛くないわ」
「あっそー」
「美姫ちゃんは僕のお姉ちゃんになるんでしょ?可愛いお姉ちゃんは嬉しいな」
ニッコリと笑った子は、陸(りく)君、そのお兄さんは海(かい)君と言うらしい。
私はありがとうと笑うと、一口お茶を飲んだ。
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