幻想ロマンティック
(海Side)
「僕、ホントは‥美姫に優しくしたいよ‥ドロドロに溶けそうなくらいに」
「俺だって同じだ、仕方ない‥こうやって“あの女”を追い詰めなければイケないからな‥」
ふーっとため息をつくと同じように陸もため息をついた。
こんな所まで似ているのか、と兄弟であることを少し面白くも感じた。
「‥美姫だけになったら、たーくさん甘やかすのに‥大嫌いって言われちゃったね」
「ああ、大嫌い‥か」
胸の奥に棘が刺さったまま抜けないような感じだ、不快感が残りもやもやしたまま。
「早く愛でたいなぁ、ね?兄さん?」
「そうだな、俺達の気が狂わないうちに‥」
小さく呟いた言葉は強い風に掻き消され、俺はもう一度ため息をついて空を見上げる。
澄み渡った空は、とても青く吸い込まれそうな程に綺麗だった。
「‥戻るか」
「そうだね、明日‥“あの女”に話があるって言われてるんだってー」
「やっと動き出したか、父さんも大変だな?しかしそれで美姫だけになるなら‥ははっ」
狂ったような笑いを押し殺すと、俺達は屋上を後にした。
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