君の手。僕の手。
口の中の匂い…
感触…
男達の声や会話…
全てを思い出し目まいがした。
「帰る…」
「え?」
「帰らせて…」
私は立ち上がり走って龍也の家を出た。
「璃香!!」
龍也は私より足が早い…逃げられるわけもなくすぐ掴まった。
「帰ってどうするんだよ…」
「関係ないじゃん!離してよ!」
「お前一人にさせたくないつた!」
「何で!龍也と一緒にいたら今度は私…龍也に傷つけられる!一緒いたくない!」
私の腕を強く握り締めていた龍也の手が力を緩めた…
「勝手にしろ。」
龍也は手を離し来た道を戻っていった。
龍也が家に戻って行くまで見た…
私は重くなった足をゆっくり動かして家まで帰るしかなかった。
「ただいまぁ」
家には誰もいなかった…
冷えきった床が家族の冷たさを語っている。
部屋に入り久々の自分の部屋に変な感覚を覚えた。
布団に潜り携帯を見つめた…
それから何時たっただろうか…
ふと目に入ったのはカミソリだった。
「痛ッ…」
痛いのに気付き手首を見ると血が手首を伝っていた…
赤くきれいな血…
ぽたッ…
涙が膝の上に落ち、真っ赤な血の中に涙が混ざった。