君の手。僕の手。



あれから1ヶ月―…


上履きを買い直してもう5回目。

売店のおばちゃんは"また上履き?"と笑いながら渡してくれた。


「ありがとう」


「今日はお金いらないよ。もうなくさないようにね」


きっと気づいてるんだ。

売店のおばちゃんは私がなくしたんじゃなく隠されていること…


私だけいつも真っ白の上履き


周りは少し、黒ずんできているのに私だけいつも新品。




なんで?




5月になりゴールデンウイークも終わった。

あっという間に私とリュウジ先輩の関係は広まった。



廊下で女の先輩とすれ違う度に小言を言われるのにも慣れてしまった。



いつもの木曜日。



先輩を正門で待っている日。



「璃香ぁ」

少し腰までずらしたズボンにいつもの足音。


「先輩っ」


そう言うと先輩は優しく手を握って歩き出す…


「先輩…あのさ」


「ん?」


「最近…色々言われてね」


「何を?」


「ううん、何でもない」


言うまでもないか。

そう思って全てを隠した。


「何かあったら俺に言え」

"俺は璃香の見方"と先輩は言って抱きしめてくれた。






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