春風が通りぬけるとき。
(……もう、ふたりの邪魔にはなりたくないから)
「ねぇ」
「…何だ?」
彼は視線を向けるか一瞬躊躇したが結局は彼女に移した。
「萌のこと、好き?」
「……井上?」
真帆の真意がわからず、眉を寄せる。
「ね、好き?」
真帆は彼をその瞳に映すことなく、じっと人が行き交っている場所を意味もなく見つめた。
「……あぁ」
「そう」
案外あっさりした答えに内心驚きをあらわにする田原。
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