春風が通りぬけるとき。
「…っ!」
彼らのことを考えていたら、不意を突かれてバランスを崩した。
「……痛っ」
どうやら何かに引っ掛かった拍子に転んでしまったみたいだ。
今日は珍しく、スカートを履いてきたので膝が擦り剥けている。
「……あーあ」
何やってるんだか、呆れながら息を吐き出す。
立ち上がろうとした時、頭上から声が聞こえた。
「…おい、大丈夫か?」
顔を上げると、そこには見知らぬ同い年くらいの男の子が、手をさし伸ばしている。
「……え?」
「早くつかまれよ」
ん、と手をズイッと前に出してきた。
その時、
暖かな春風が吹き荒れた。
優しく優しく彼女を包み込み、まるで新しい恋の季節が訪れる知らせかのような、そんな風が─…。
【END】