春風が通りぬけるとき。
自然と、足が止まる。はたして真帆はそのことに気付いているのだろうか。
鞄を持つ手に力が籠もっていることさえ、下手すれば彼女自身、分かっていないのかもしれない。
(…いつも、一緒なんだね)
そんなこと、当たり前なのに。理解しているはずなのに。
ふたりがいつも一緒に登下校していることだって知っているのに。
ここまでふたり一緒だと、凄く、切ない気持ちでいっぱいになる。
どこか哀しそうに眉根を寄せている彼女を、不意に萌が振り返った。
萌にしてみれば、何気なく身を反転させただけなのだが、真帆からしてみると本当は自分の存在に気付いていたのではないか、と思わず疑ってしまう。
見せ付けているのでは、自分が彼を好きなのを知って。
そんなはずないのに。 萌に限ってそんなことあるはずが無いのに。
こんな風に考えてしまう自分が、酷く憎たらしかった。