春風が通りぬけるとき。
「あ、真帆! おはよー!」
萌と田原が足を止め、その場で自分を待っていることを悟った真帆は、小走りでふたりに近づく。
「……おはよ、萌、田原」
「はよ」
「うん。 …ところで真帆、どうして声かけてくれなかったの?」
「あ…、うん、ごめん」
唇を尖らせてプクッと可愛らしく頬を膨らませる彼女に苦笑いした。
(…話し掛けられるワケないよ。 それに萌は、知らないもの)
あたしが、田原を好きなのを。