春風が通りぬけるとき。


「……」


(何なんだろう…)


先程から、前方付近で凄く視線を感じる。

今現在、話しているというよりはひとりで勝手に喋り始めているのが萌で、そんな彼女に真帆は曖昧に相づちを打っている状態。

勿論、萌からも視線をこちらに向けられている。

だが、それとは別にもうひとつ。


(……多分だけど)


「井上」

「……何?」


どうやら感じていた視線は気のせいではないらしい。目が合う今でさえ、何故か凝視されている。

視線の主である田原が眉を寄せたまま、口を遠慮がちにゆっくりと開いた。


「……お前、目腫れてないか?」

「…っ!?」


驚きで目を丸くする。 その次の瞬間、泣きそうな表情で顔を小さく歪めた。

それに今度は萌と田原が目を見張った。



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