春風が通りぬけるとき。


見られたくない、そう思うのに必死で、とにかく俯く。


(……どうしよう、何て言い訳すればいい?)


頭の中が混乱する。 焦れば焦るほど、どうすればいいのか分からなくなった。

だがそんな混乱している頭でも、ただひとつだけ感じたことがあった。


「…真帆?」

「井上?」


──ここにはいたくない。


「…ごめん、何でもないから。 気にしないで」

「ま、ほ?」


萌の口からどうしたの、と呟かれる前に少女は逃げる様に走りだした。



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