春風が通りぬけるとき。


ふと、親友という単語が頭に昇った直後、手に血が滲みだす程強く握りしめ、歯が折れてしまうのではないかというほど噛み締める。


(……親友)


友達でなく、親友。

萌は友達とか親友とか、そんな言葉を軽々しくはくような子ではない。


そんなこと、一番よく真帆が分かっていた。


実際彼女は、それなりに仲が良い子でも友達と言ったことはない。

萌によればあくまでも、クラスメートらしい。

だから彼女は、とても友達というものを大切にする。

それは田原も同様だった。


(…だからかもしれない)


無意識にそれをやってのけるふたりが、似たふたりがお互いに惹かれ合ったのは。

多分ふたりは、自分がそういうことをしていると気付いていない。



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