春風が通りぬけるとき。


そんなふたりだから、知ってほしくなかったのに。

どうして、気付かれてしまったのだ。


(……せめて、相手が萌だったら)


どんなによかったことか。

大好きな貴方が変化に気付いてしまうから、こんな些細な変化でさえ、知ってしまうから。


余計、苦しく痛くなる。

そして最後、──もっとこの想いが大きくなっていくの。


そのまま、何も分からず笑っていて欲しかった。

萌の隣で。

変化に感付かれるくらいなら、痛くてもそっちの方がずっとマシだ。


自分をおもいっきり叩くように、走るスピードを上げた。



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