春風が通りぬけるとき。
「今日はどうしたの?」
ふんわりと優しく微笑みを浮かべる。
「……体調が悪くて」
「体調?」
別の紙を取り出し、休ませていた手を動かし始める。
それはどうやら、保健室に訪れた病気の人を記録している様子だった。
「体調って、具体的には?」
「……」
そう問われた少女は何と答えればいいのか分からず、黙って俯いた。
雪原先生は二十代で、気軽に話せる先生ということで他の生徒からも人気だ。
そんな先生だから、悩みを相談しに来る生徒はそれなりにいる。
真帆もその生徒のひとりで、色々な悩みを聞いてもらっていた。