春風が通りぬけるとき。
ポケットにハンカチを元通りに折り畳んでしまっていると、教室から担任である池先生が出てきた。
彼はこちらに気付いた様で、近づいてくる。
なので真帆も先生に近寄った。
「大丈夫か?」
「はい、すいませんでした」
池先生はいや、と頭を軽く振る。
「くれぐれも、無理はするなよ」
はい、と頷くと満足した様に笑み、身を翻して去っていった。
そんな担任を見送った後、教室の扉を開ける。
するとガタッと席を立つ音が耳に届いたかと思えば、萌が心配そうな表情で真帆に駆け寄ってきた。
「真帆! 大丈夫?」
「うん」
「本当に? 何処か痛かったんじゃないの? それとも何かされた!?」
そんな奴がいるならあたしがシバいてあげるよ、と凄く萌らしくない物騒な言葉を吐く彼女に苦笑する。
「ううん、何もされてないよ!」
拳を握り、今も誰かに向かって殴りかかりそうな勢いの萌を慌てて止めた。