春風が通りぬけるとき。
「………本当に?」
「本当だって」
ジーッと疑いの眼差しを浴びせられ、内心冷や汗をかきながら何度も頷く。
彼女はいまいち納得はしていないものの、それ以上は問い詰めることはしなかった。
(……危ない危ない)
誰にも聞こえない程の小さなため息をつく。
彼女がこんなことを言う日が来ようとは夢にも思わなかった。
シバくだなんて言葉、一体何処で覚えたのだろうか。
萌は本当に友達を大事にする子だから、それは田原だよ、なんて口を滑られた日には。
ほぼ間違いなく、彼に命の危険が迫ることになるだろう。
そんなことを考えているとはつゆしらず、萌と入れ違いの様に田原が寄ってきた。