春風が通りぬけるとき。


「何だ?」


不思議そうに顔だけを向けて、こちらを見やる。


「……今日の放課後、話したいことがあるんだ」

「話だったら、今すればよくないか?」


顔だけでなく、身体も完全に方向転換させた。


「……それは、無理」


床から視線を外し、田原を視界に入れる。


「大事なことだから」


その瞳はとても真剣で、彼はそれが此処では言えない事なんだと悟った。



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