春風が通りぬけるとき。
チラリ、教科書等を詰めた鞄から彼に目線を移すと、田原は萌と話していた。
きっと一緒には帰れないとかなんとか言ってるのだろう。
(先に行った方がいいよね…)
鞄を始めは持っていこうかと思ったが、告白しに行くのだからとりあえず机の上に置いておくことにする。
それで何事もなかったかの様に教室を後にした。
今日の天気は、今の気分をあらわしているみたいにどんより灰色の空が広がっている。
校舎裏は人気がない。
皆はもう帰るのだから、校舎裏なんて来るはずはないのでこちらとしてはそっちの方が良いのだが。
ふはぁ、と息を吐き出せば、白くなって消える。
暫くそうして待っていると、足音が聞こえてきた。
その足音は確実に真帆に向かってきている。
音が大きくなるにつれて、彼女の顔に緊張の色がみてとれた。