春風が通りぬけるとき。


「……です」

「え?」


彼はどうやら彼女が発した言葉を聞き取れなかったみたいで、何だと聞き返す。

だから真帆はもう半分ヤケになりながら、叫ぶ様に鋭く言い放った。


「田原が好きです!」


今の告白された本人の顔は、ポカンと随分間抜けな表情をしている。

目を丸くして、口を開いて。

馬鹿丸出しだ。


「……ブッ」


いけないと思いつつも、ついつい吹き出してしまった。



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