春風が通りぬけるとき。


「…!」


いきなり笑われて恥ずかしいのか、頭をポリポリ掻く。


「…ご、ごめんごめん。田原、物凄く阿呆な顔してたから」


目がうっすら濡れてきて、それを人差し指で拭う。


(……でも、田原のこんな表情、初めて見た)


彼の笑顔とか面倒くさそうな顔とか、そんな表情ならいっぱい見てきた。

けど、馬鹿っぽい顔なんて一度も目にしたことはない。

なのにまさか、告白した直後にこんな表情を拝めるとは思わなかった。


「…仕方ないだろ。告白されるなんて考えてもみなかったんだからよ」


フイッと外方を向く大好きな彼。



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