春風が通りぬけるとき。


(嬉しいと、感じてくれるの…?)


迷惑だと、邪魔だと思っていたのに。

フラれて、涙をおさえるのに必死だったけど、次は別の意味で泣きそうになった。

いや、もう泣いているといった方がいいか。

一筋の線がキラリと光る。


「…ごめん。 それから…、ありがとう」

「こちらこそっ、ありがとう…」


ふわり、と静かに熱い水を流しながら微笑む。

その笑みは、儚くて切なくて、けれどもとても清らかな綺麗なものだった。



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