春風が通りぬけるとき。
やっとの思いで家に着き、鍵を取り出してガシャッと乱暴に扉を開け閉めする。
靴を雑に脱ぎ捨て、バタバタと大きな足音をたてながら階段を駆け上がり、部屋に向かう。
自分の部屋の扉も乱雑に開けて、壁に囲まれた空間に立てこもる。
マフラーも手袋も、コートでさえいつもなら綺麗に畳んだりハンガーにかけたりするも、今回ばかりは適当に片付けた。
まぁ、そうしただけでもマシだろう。
真帆も正直なところ、投げ捨ててやりたくなったが、習慣というものは恐ろしく、身体が動いてしまうのだ。