春風が通りぬけるとき。


やっとの思いで家に着き、鍵を取り出してガシャッと乱暴に扉を開け閉めする。

靴を雑に脱ぎ捨て、バタバタと大きな足音をたてながら階段を駆け上がり、部屋に向かう。

自分の部屋の扉も乱雑に開けて、壁に囲まれた空間に立てこもる。

マフラーも手袋も、コートでさえいつもなら綺麗に畳んだりハンガーにかけたりするも、今回ばかりは適当に片付けた。

まぁ、そうしただけでもマシだろう。

真帆も正直なところ、投げ捨ててやりたくなったが、習慣というものは恐ろしく、身体が動いてしまうのだ。



< 66 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop