春風が通りぬけるとき。


ポカーンとしていると、狙ったみたいにタイミングよくぐうぅと可愛らしい音が鳴る。


「……」


お腹がすいて当たり前だ。

彼女は昨夜から一口たりとも食べていないのだから。


「…さて、顔を洗って朝食でも食べますか」


あのお腹の素直な音は華麗にスルーする。

別に誰にも聞かれていないのだから、恥ずかしがる必要はないのだが。

けどまぁ、そこは年頃の女の子だからということで。

部屋を出ようとして、はたと気付いた。


(あたし…、制服のままだ)


昨日は、制服のことまで頭が回らなかった。

あのまま寝てしまったので、制服は予想通り皺くちゃだ。



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