春風が通りぬけるとき。


(…それに、目腫れてるし)


自分の姿が映る板を直視する。

そこには、目を赤く腫らして水滴が流れ落ちている顔の真帆がいた。

かけているタオルを手に取りパフッ、と顔を優しい生地で包み込む。

綺麗サッパリ拭いたら、今度はリビングに足を運ぶ。

キッチンで適当に料理らしきことをし、それらをテーブルに置く。

彼女の目の前にあるのは、イチゴジャムがついた食パン、焼き上がりでホカホカの目玉焼き、色とりどりのサラダといった、とても簡単なものだった。


(…朝だし、これくらいでいいよね)


いくら昨夜何も口にしていないとはいえ、起きたそばからいきなりそんな沢山胃に入るわけがない。



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