春風が通りぬけるとき。
(……そういえば)
彼が立ち去る前のことが頭に過る。
あの後彼はこう言った。
『…あの…さ、俺、フッといてなんだけど…、これっきりで終わりたくないんだ』
真帆は口をつぐんだまま話を聞く。
『だから…、また、仲良くやってほしい』
勝手なことは分かってるけど、と言った田原は眉を寄せてどこか哀しそうな淋しそうな感情を漂わせていた。
真帆は単純に嬉しかった。
それを彼の方から言ってくれるなんて。
(…もう、仲良くすることは出来ないかもしれないと覚悟までしてたもんな……)
遠いところを目に映しながらあの後の経緯を振り返る。
その時、うんこれからもよろしくねと発すれば、田原はニッと笑顔を見せてくれたんだ。