春風が通りぬけるとき。
「うん、行こう」
『本当!? やったー!』
高校生にもなって、本当に子供みたいなはしゃぎように頬が緩む。
『あ、真帆!』
「うん?」
小首を捻る。
『いい忘れてたんだけど、風太もいるから!』
「は…?」
(なんですと!?)
『じゃあ明日、駅前14時に集合で』
「萌、あの」
『じゃーね!』
「まっ…!」
ツーツーと虚しく電子音だけが鳴る。
「……」
人の声に重ねる様にして散々遮った挙げ句、そのまま一方的に電話を切るか普通。
「…ま、萌らしいけど」
(こういうことがあっても、なんか憎めないんだよなぁ…)
困ったように笑みを浮かべ、彼女の電話番号を押す。
そのまま暫く萌が電話に出るのを待ってみたが、話中なのか繋がることはなかった。
パタリ、と携帯を閉じてそれをテーブルの上に置く。
そして、倒れこむようにベッドに横になった。
濡れているタオルをもう一度目の辺りに覆わせる。
「……はぁ」
意識するわけでもなく、自然とため息が漏れた。
(……明日が憂鬱になってきた)
また、深い深すぎるため息をつく真帆であった。