春風が通りぬけるとき。


幸いなことに、真帆の家から駅は近い方で10分弱で行ける。

走らなくとも、時間には間に合うだろう。


(…でもなんか、焦っちゃうんだよね)


自分より早く来てるかもしれないと思うとつい、ね。

早足になっていた足のスピードをゆっくりと落とし、辺りをキョロキョロする。


(なんか…緊張する)


彼に対しての想いは綺麗サッパリ吹っ切れたが、やはり会うとなると顔が強ばった。


(いけないいけない! これだと萌に会ったら怪しまれちゃう)


田原に迷惑はかけたくない、と両頬を叩いて気合いを入れたいところだが、周囲の目があるためそれは出来ない。

なので、つねるだけに止めておいた。

無理に自分を落ち着かせたら、また周りを見回し始める。


(まだ来てないのかな…)


あちらこちら視線を彷徨わせていると、手を振っている少女が目に入った。



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