春風が通りぬけるとき。


甘いだけじゃないと、決して楽しいばかりが恋愛ではないと知ってしまった。 気付いてしまった。

だから、貴方を無理矢理にでも嫌いに、忘れたくなる。


(…でも、あたし)


我が儘なの。

だから、忘れたくないし、覚えていたいと思ってしまう。


なんて自分勝手だろう。

嫌いになりたいと願うのに好きだと言って、忘れたいと嘆くくせに嫌だと言う。

これではまるで、小さな子供が駄々をこねているみたいだ。


そこでまた、引きつった頬を一度無理に持ち上げると、目をゆっくりと伏せた。


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