春風が通りぬけるとき。
「ねぇ、直ぐに買ってくるから行ってきていい?」
「もう決まってるの?」
「うん。 この前来たんだ」
ニコニコ、彼女の周りに音符が飛んでいる。
今まさに、鼻歌でも歌いそうだ。
「あたしはいいよ」
「俺も」
「んじゃあ、行ってくるからふたりはここで待ってて?」
「は?」
「え?」
ポカンとしてる間に、萌はダッシュでそのお店に向かってしまった。
(……止める暇もなかった)
「…ここにいると通行の邪魔になるな」
「……うん、移動しよっか」
(どうしよう、また気まずい空気に…)
ふたりはのったりした動作で木が生えてそこを四角く囲っているところへ移動する。
端にあるからあまり通行の邪魔にはならないだろう。