春風が通りぬけるとき。


「……」

「……」


沈黙。

ふたりとも口を開くことさえしない。


(…萌、何故あたしを連れていかなかった!)


せめて田原を連れていってもらったら、こんな雰囲気にはならなかったのに。

三人でやっと、さっき居心地悪い空気から抜け出せた。


(なのにいきなりふたりきりなんて無理だって!)


はぁ、と重苦しいため息をつく。

ちらりと彼に気付かれないように盗み見みると、田原も困っているのか髪をぐしゃぐしゃに掻き毟っている。



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