【歪童話】眠りの森の茨姫
「ち、ち……」

希はぶるぶると指先を男に向けて腰を抜かしたように後ずさりました。

「茅王子……この方達は?」

姫がそれは美しい声で茅に尋ねました。

「茅兄様!」

希が叫びます。

「……じゃあ、心の言ってた妄言を吐く王子って手前のことなのか?」

蒼が茅をじいっと見つめて言いました。

「妄言吐いた覚えはありませんが……心というと、貴方は蒼王子ですか?」

「そうだ!俺が蒼だ」

「それで、なんで希と一緒にこんな所に……」

「そこの姫を探しに来たんだ。希とはほとんど別行動だったけど」

「だって……茅兄様の姫なんだろ?だったら私の姉のようなものじゃないか」

「え……嘘だろ希。散々俺のこと『私と姫の間男』って……」

「だって私には姉様がいないからっ。蒼に盗られたらどうするんだよ!!」

「盗らねーよ。確かに最初はヤケになってたけど……俺はとっくに自分の嫁を見つけてたからな」

「はあ?じゃあなんで私の邪魔ばかりしてたんだよ」

「……それは」

奏は二人をじいっと見つめていましたが、茅を見上げて言いました。

「この方達は一体……?」

茅はにこりと笑って言いました。

「姫。こちらは隣国の蒼王子。そしてこっちが」

















「私の妹の希です」
< 8 / 9 >

この作品をシェア

pagetop