希望の唄~運命とぶつかった純愛の物語~
「ワァァーーー!!!」
客席は歓声を上げる。
俺は背伸びをしてステージを見る。
手を振って入ってくるメンバーたちが見えた。
その中に・・・
「紗恵・・・」
黒のアコギをかけて出てくる。
俺の声は歓声にかき消されたはずなのに、紗恵と目があった気がした。
「みんな、今日も来てくれてありがとう!」
ファンも答えるように手をあげる。
「今日も、新曲を用意しました。・・・ノリもアカネも優子姉も、ちょっと困ってたんだけど。どうしても、今日歌いたくて。」
そして、紗恵が俺の目を捉える。
「『永遠』」
心地よいスティックの音が響く。
ベースの赤い人からは想像もつかないほど綺麗な音がする。
キーボードは重低音を支えている。
そして紗恵の奏でる弦から出る音、声。
俺は胸が苦しくなるのを感じた。
こんなに綺麗な声は聞いたことが無かった。
心地が良くて。
綺麗で。
ずっと聞いてたかった。
美しくて、
ただ切なかった―――。