希望の唄~運命とぶつかった純愛の物語~


ついた頃には日も暮れていた。


救急車と野次馬が困惑を起こした。


俺は止める人を無視して香奈子の元へ走った。


「香奈子!?香奈子!!聞こえるか!?俺だ!!泉だ!!」


必死に叫んだ。


俺は香奈子の冷たい手に触れた。


「おい!!香奈子!!目を覚ませ!!」


俺は幾度となく繰り返す。


「―――ぃ」


「…え?」


「ぃずみ…」


――時が止まったと思った。


雑踏に消えそうな弱々しい声で、香奈子は俺の名を呼んで――



――笑ったんだ――



「香奈子!!」


「…ぃて……だ……」


「え?」


「…来て…くれたんだ…」


香奈子の頬は濡れていた。


「泣くなよ……バカ……」


そう言っている俺も泣いていた。



< 33 / 53 >

この作品をシェア

pagetop