希望の唄~運命とぶつかった純愛の物語~
造り上げた虚像
「……ただいま」
あたしは玄関で小さく呟く。
いつもならリビングで皿の割れる音や、母のヒステリックな声が聞こえるはずなのに…
今日は気持ち悪いくらい、シンとしていた。
リビングのドアを開けると、あたしは目を見開いた。
「何なんだよ!!お前は悲劇のヒロインぶって!!女の一人や二人居るコトが何だ!?悪いか!?お前に迷惑を掛けたか?」
今まで怒るコトの無かった父が母に手を挙げていた。
母は頬に手を当ててブルブルと震え、亮介は部屋の隅でうずくまっている。
「……今度はあんた?」
あたしは鼻で笑う。
「紗恵…お前もお前だ!いつも夜遅くまでバンドか何だか知らんが下らんコトにウツツを抜かし…井上家の恥だ!」
父は顔を真っ赤にしてガナった。