希望の唄~運命とぶつかった純愛の物語~
「なん、で・・・」
あたしはケータイを落とした。
「行こう」
「え?」
「紗恵の家に、行こう」
「嫌よ。あんな家・・・帰りたくない」
「逃げるな!!」
「先生・・・」
先生はあたしの肩をつかむ。
「現実から、目を背けちゃいけない!今は、しっかり向き合わなくちゃいけない!つらいと思う。苦しいと思う。それは分かる!でも、紗恵は強い!乗り越えられる!それでもダメな時は、俺が護る!だから、一緒に逢いに行こう!」
無意識のうちに、目からは涙があふれていた。
「もう分かるだろう?紗恵は、一人じゃねぇんだよ!!」
「っ・・・」
「麻友も、お前の弟も、バンドのメンバーも、みんな俺に逢いに来たんだ!どうにかしてほしいって!紗恵が寂しくないように、自分達にできることはねぇかって!こんなに大切にされてるのに、お前は何を恐れてんだよ!何を怖がってんだよ!傷ついたら、傷を埋めてくれる仲間が居るじゃねぇか!なのにお前自身が前に進まなくてどうすんだよ!!」
「みんな・・・」
「行こう。・・・自分の足で、進むんだ」
あたしは涙を手でぬぐうと、一旦荷物を取りに帰った。
「聴いてもらうの。・・・あたしの希望の唄を。」
「・・・そうか」
先生は笑うと、あたしを助手席に座らせてくれた。
それだけで何があっても、大丈夫な気がした――。