希望の唄~運命とぶつかった純愛の物語~


「君は、まだ新任教師だろう!社会人成り立てで、人生のいろはも知らず、子供も持たない未熟な君に何が分かるんだ!!」


「教師である前に、社会人である前に、僕は一人の人間です!!」


先生が立ち上がる。


「確かにまだまだ未熟者です。知ってる事より知らない事の方が多いです。…でも、少なくともあなたより、人の気持ちは…紗恵さんの気持ちは、分かっているつもりです!!!」


「君は自分が何を言ってるのか分かってるのかっ!!!」


「止めて!!!!」


今にも父親が殴りかかりそうだったから、あたしは声をあげた。


「…ずっと、逃げてた」


「お姉ちゃん…」


「ずっと、あたしは現実から目を背けてた。受け止めるのが怖かったの。…自分が受験に失敗してから、家族がどんどん壊れていくのを目の当たりにして…自分がこの家庭を崩したんだって自覚したくなくて…」


あたしは俯く。


「だから始めた音楽だった。…でも今は違う。仲間もできた。ちゃんと聴いてくれる人もいる。やりたい事があるの。お父さんは馬鹿らしいって言うよね。美徳でも何でもないし。…でも大切にしたいの!この夢も…この仲間も!!」


ずっと塞ぎ込んでた自分が、目を覚ました瞬間だった。


「……よく、話してくれたわね」


「え…っ」


頬がまだ痛々しいお母さんが優しい目をした。


「今までお母さん…紗恵と亮介に酷い事ばっかり言って…二人を責めてたわよね。本当にその事は…後悔してるの。ごめんなさい」


「お母さん…」


「お母さんね、きっとあなた達を傷つけないとどうにかなっちゃいそうだったの。私が弱いせいで、たくさん酷い事をしたわ」


「お母さんっ…」




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