希望の唄~運命とぶつかった純愛の物語~
「でもお母さんね、今こうやって紗恵が話してくれた事…凄く嬉しいの」
お母さんはあたしの髪を撫でる。
「…あなたも、そうなんじゃないのかしら?」
そうやってお母さんが目を向けたのは、お父さんだった。
「…ほんの、遊びだったんだ。愛人やら作ったのは…。最初は気休めでも、少しだけ楽になれるならって思って…。でもいつからか、家族はバラバラになった。もう家族という言葉さえそこにはなかった。だから居場所が欲しかった。俺のままを受け入れてくれる場所が…」
言い訳だ。
…分かってる。
でも今のお父さんを、責める事はできなかった。
「…俺も、逃げてたんだよ。向き合う事が怖くて、俺はろくに家に帰らなかった。紗恵を責められるほど、立派な事なんて何一つやってない。…紗恵の言った通り、人目ばかり気にして…中身はまるでない。俺は、空っぽだ」
お父さんは頭を掻く。
そして立ち上がる。
「今まですまなかった!!母さん、亮介、紗恵。俺は、父親である前に人間だった。親としても、人としても…本当に恥ずかしい事をした…!!」
お父さんは腰を折って謝った。
「……お母さん、お父さん、もういいよ。」
「紗恵…」
「それより、あたしの歌を聴いて?心から、歌うから」
あたしは横目で先生をチラリと見る。
“良かったな”と言わんばかりに微笑む笑顔。
あたしはハードケースからギターを取り出した。