The Prince Of Hikikomori
「今日、
兄さんいつ来る?」

シャツの釦を
とめられながら尋ねる。
「王子が
早く起きて下さらない為あと、2時間後です」

ベストを用意しながら時計を見る。

「オレ…早く起きただろ!」

「…1時間かけて目を覚ますというのは早いとは言いませんよ?」

厭味とわかる
表情、口調、態度の
ムーントレイは無敵。

「…そっ、その時間を
計算して起こしてこそ
有能な人間だろ?」

一応抵抗しないと
オレの気が済まない。

「人がどのくらいで
目覚めるのか解るのなら執事などしていません。学者になりますね」

うっすらと口の端を
上げる彼は、
ネクタイを手にとる。

「むっ…もう良い!
ネクタイは後にする!」

彼から離れて、
TVの前に座りこみ
ゲームを始める。

「王子?」

「お前は準備とか
忙しいだろ?
30分前までゲームしてる。構わなくて良いから…
さがれ」

TV画面から視線を離さず静かな口調で話す。

オレはただ…

ただ…

ムーントレイと長く話して

居たかっただけで…

「わかりました。
朝食も
こちらにお運びます。
イーグレット様との昼食は
何に致しますか?」

淡々とした彼にオレは
涙が流れそうになる。

「何でも良い!」

「…それでは、パスタでもよろしいですか?」

「良いよ!」

抵抗してかなう訳ない…知っていたのに
それでいじけていたら
本当にオレは
ガキだなと思う。

それでも、
オレの事分かっていて
欲しいという
オレのワガママ…

「それでは、準備を……

泣くのなら
私の胸に来なさい。

ウォルフェンツ…」

扉の前に立った彼が
ため息をつく。

「泣いてない」

意地は張通す。

「…そうですか…
なら、私は失礼します」

ムーントレイは静かに退室してしまった。

「…ヤダ…よ…
近くにいて……」

「早く素直になれば良いのですよ…
意地っ張りな我が王子」

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