たる

「だったら、僕の腕から手、離せよ」

 あら、口に出しちゃった。
 藍原馬鹿野郎独裁者は、先ほどとは違う意味で、ぷるぷる震え出した。
 手を、僕の腕から乱暴に離した。

「べ、別に怖くて……掴んでたんじゃないから」

 最後の方は聞こえないほど、小さな声だった。

「てか、そんなことは興味ないから。何で藍原さんは、この廃屋にいるわけ?ひょっとして、ここに住んでるわけ?」

「そんなわけないじゃない」

 そりゃそうだ。

「わ、私は、あんたが心配で……」

「心配?」

 僕は首を傾げた。
 何故、藍原馬鹿野郎独裁者が僕を心配しているのか。
 何故、彼女は、僕がここにいることを知っているのか。
 次々と疑問が沸いてきた。

「ひょっとして、超能力者?」

「だから違う」

 だからって……一回しか聞いてないじゃない。
 超能力者じゃないとすると……

「地底人?あ、宇宙人!!?」

「真面目に言ってる?なら殺す」

 この人、マジだ。本気で殺す気だ。
 僕は少々藍原馬鹿野郎独裁者に恐怖心を抱いた。

「で、結局何でここにいるわけ?」

 神妙な口調で、聞いた。殺されるのは嫌だから。
 ついでに言うなら、本当は何故、藍原馬鹿野郎独裁者がここにいるなのか、もうどうでもいい。
 でも、何か話せていないと、怖いのだ。この、周りの暗さが。

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