たる

 しかし、藍原馬鹿野郎独裁者は僕と話す気はないらしい。
 暗さに目がなれ、周りが少しは見えるようになった。
 それで、藍原馬鹿野郎独裁者手を僕の腕から離すと、先々歩いていっているのか見えた。

 暫く、僕たちは無言で歩いていた。
 カツンという足音が、無駄に怖さを引き立てていた。
 藍原馬鹿野郎独裁者は、颯爽と、先を歩いている。
―女の人は強い。

 どうやら、この噂は本当らしい。
 僕がこんなに怖がっているのにも関わらず、藍原馬鹿野郎独裁者は平然としている。実に羨ましい。僕もその強さが欲しいぐらいだ。

「ねえ」

 急に藍原馬鹿野郎独裁者が立ち止まり、振り返る。

「なーに?」

「その答え方、キモい」

 正論だ。フハハ。
 キツイ言葉を僕に浴びせた藍原馬鹿野郎独裁者だったが、急にその声音は怯えたようになった。

「さっきさ…変な音聞こえなかった?」

 これは新手のいじめかな?
 そんな僕の気持ちを察してか、藍原馬鹿野郎独裁者は、急に怒りだした。

「本当よ!!本当に聞こえたんだから」

 どうやら本当らしい。

「特に聞こえなかったけど」

「チッ」

 いや、何その舌打ち。役立たずのブタよ!!とでも言いたげな舌打ちは。

「あんたって、本当にぼーっとしてるわね。あんたと廃屋に入るんじゃなかった」

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