月の光につつまれて


田邉さんから返事はない。



「田邉さん?」


「ん。なんでもない。今家にひとりか?」


「うん。今日はお父さんは出張だし、お母さんは親戚のとこにいってるから、たぶん帰ってこないと思います。」


「そうか。」




ケータイの向こうから田邉さんの息遣いと車の通る音が聞こえた。


まだ、外なのかな・・・?



「今、まだ帰る途中ですか?」


「あぁ、駅から家まで歩いてる。」


「電話してて大丈夫ですか?」


「もう家の前だから。」


「それならよかったです。」
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