ブラッツ
「あー…あのさ?あのー…ここはやめない?」
嫌な汗がだらだらと滝のように流れ出る。
俺、こんな見知らずな女と初ラブホなんて…
嫌です…
「はぁ?本当ならソレ、あたしの言葉なんだけど」
少女はズイズイと少年に歩み寄る。
少年はひぃと男とは思えない声を出し、一歩後ずさる。
少女はギッと少年を睨んで、
「近くにはここしかないっつってんでしょ?」
で…でもさ、と少年は小さな声で
「車とか…でも…よくないですか…?」
少女があまりにも大きく見え、自然と敬語になってしまう。
少女は、はぁ?!と大声を出し、
「あたしに車で寝ろって?!えぇ?!」
ググっと少年の襟元を掴む。
「お…怒んなってば…」
少年は少女の手をはたく。
「あたしは海に行きたいの。あんたがどうしてもここが嫌って言うなら早く海に行って」
少年はうーん…と悩む。
このまま運転…?
居眠り運転で捕まりそうだなぁ…
今にでも寝てしまいそうな少年にとって、車の運転はキツイだろう。