ブラッツ
知り合いじゃない。
友達でもなければ、
関わりのある人でもない。
全く関係ない他人だ。
なのに、走っていた。
少年は薄着のまま、この寒い空気を切り裂くように走っていた。
分からない。
なぜこんなにも頑張って走っているのか。
分からない。
なぜ頭の中に少女がいるのか。
分からない。
なぜこんなにも少女を思っているのか。
分からない。
分からない。
分からないけど、走っている。
少女のために、走っている。
それだけはしっかりと分かっている。
小さな小さな、
今にも壊れてしまいそうな少女のために、
少年は走った。
走って走って、海へと向かう。
少女の待つ、広い、壮大な海へ。