ブラッツ
「あんた…」
「まじ意味わかんねえ!!」
少年は少女を睨む。
がっちりと掴んだ、小さな肩。
「お前は何がしたいんだ?!自分で死ぬなら最初から俺を巻き込むな!!」
少年は吐き捨てるように言いまく。
すごくムカついた。
殺してとか言っておいて、自分で死のうとしてることが。
ムカついた。
今更自分で死ぬなんて言われても、少年は止めるに決まってる。
それが一番ムカついた。
俺の、この想いにムカついた。
すると少女はゆっくりと口を開けた。
「もういい」
ふふ、と薄い笑みを浮かべる。
少年は額の血管を浮かびあがせながら、
「何がもういいってんだよ?」
今にも殴ってしまいそうな拳を必死に押さえる。
すると少女は少年の手を振り払い、海の奥へと走って行く。
「ちょ…ッ!!」
少年も急いで一歩踏み出す。
少女の肩を掴もうと、手を伸ばすが届かない。
水は腿辺りまできている。
波が荒いせいか、一歩踏み出すのがやっとだ。