ブラッツ
少女は少し顔を上げ、少年と目を合わす。
「あっ…あたしのね…?親父…暴走族って…っ…言ったでしょ…?」
「うん」
少年は少女に一つも触れないまま、ただ相槌だけを打とうと思った。
多分、不器用な自分にできるのはこれだけだと思った。
「それのせい…っでね?もっもう…居場所が…うっ…な…い…」
搾り出すように、懸命に少年に伝えようとしている。
鈍感な少年でも、それは分かる。
「学校も…家も…
親父は…あっあ…たしが…男じゃ…ないから…」
「うん…」
「女は…いらないんだって…」
言って、悲しそうに笑うんだ。
笑えない。
のに、笑うんだ。
少年の顔を見て、笑ってよ?とでも言いたそうな顔で。
でも少年は笑えなかった。
笑えるはずがない。