ブラッツ
―――――「ねぇ、殺してよ」
不意に、どこからか声が聞こえてきた。
とても冷たくて、凍えた空気を切り刻む。
初めて聞いた、悲しい硬い、苦しい声。
瞬間、
一気に闇の中に光が降り注いだ。
いきなりの、久しぶりの光に目が眩む。
オレンジや黄色のチカチカする視界を狭くしながら前方を見る。
「っ…?」
まぶしっ…
人影。
男か女か、チカチカして分からない。
何も見えない。
ってか俺…殺される…?
ゴクリと唾を飲み込む。
俺はギュっと目を閉じた。
「ねえー聞いてんのー?」
さっきとは違う、オチャらけたような声。
女だ。
女の声。
その女はもう一度告げる。
「ねぇ、殺してよ」